6番目の彼氏

あれから、長いこと彼氏は作らなかった。

友達と飲みに行ったり、その当時東京では「ジュリアナ」なんてものが流行り、
でも私が住んでいるとこにはそんなものないから、わざわざ隣県まで踊りに行った。
バブルが弾けて、でもまだまだリッチな人が多く、全部男が奢ってくれたりして
「あ~女に生まれてきて良かった!」と心底楽しんでいた。

彼氏なんていなくても楽しい!まだまだ私は若いも~ん♪なんて、
今思うと「なんでこの時に、なんとかしてなかったんだよ!」て
自分に腹立つけど、過ぎてしまったものは仕方がない。
それくらい、毎日が楽しかったのである。

バブルなリッチマンはいなくなり、遊ぶのにも飽きた、22の春。
私の前に現れた男。会社の上司で、妻子ある男だった。
この男、顔は私の好みではなかったが、メチャクチャ優しい男だった。
ま、10も年が離れていたから当然だが、同年代の男にはない包容力があった。

ある日私は、この上司に食事に誘われた。
拒否したかったけど、セクハラと言う言葉がまだ世間に広まってなかった時代。
「上司の誘いは断れないよな。1回付き合えば気が済むだろう」と行くことに。
が、私はスッポかした。
私にも常識はある。たとえそれが上司であろうとも、家庭のある人と2人きりで食事なんて・・
でもこれが、彼に火を点けたようだ。

何度もしつこく誘ってくるようになり、私は仕方なく、
1回だけという約束で食事に行くことになった。

しかし彼は、1回では気が済まなかった模様。
次の週も、また次の週も誘ってくる。
私も「この前は何もなかったし、いい物食べさせてくれるし~」なんて気を許し、
ノコノコ付いて行ってたのが悪かったのかもしれない。

好きな人のいなかった心の中にスッポリ入り、会わないと寂しいとさえ思うようになった。
彼を好きになっていた。

そこからは早かった。
彼と一緒にいるために、両親の反対を押し切って1人暮らしをし、会社も辞めた。
「お前が26になったら結婚しよう」と言う彼の言葉を、素直に信じた。

でもそんなに甘くなかった。
26になっても彼は「子供が小学校卒業するまで待って」と延ばし、一向に別れる気配がなかった。
私は私で、彼との結婚を本気で考えてはいなくなってた。

コソコソするデート・ゴールの見えない付き合い、自分との葛藤
すべてに嫌気がさした私は彼と別れた。
私は27になっていた。













© Rakuten Group, Inc.